2012-12-09
キリンジ弟、堀込泰行はホライゾン(地平線)を目指す
キリンジの弟、泰行の脱退でキリンジファンの悲鳴が聞こえたが、個人的には「For Beautiful Human Life」の2003年頃からキリンジには停滞を感じていたのでここらで何か大きく変わる(変える)ことは賛成です。
2010年のアルバム「BUOYANCY」収録の「ホライゾン!ホライゾン!」の歌詞にはすでに脱退して一人で音楽を作って行こうとしている決意が込められているように思える。
2006年のアルバム「DODECAGON」の頃から、脱退の意識があったとかいう話もあったり、兄と違って自身の音楽にドキュメンタリー性を持たせる志向があるので、脱退発表の2年前のこの曲にそういう思いが込められていても不思議ではない。
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遠く吠える負け犬の影 夏の亡骸 ながめりゃ
燃える空 くすんだ魂を 黒いドクロが蹴っとばした
君の頬へ 最後のキッスを 旅立ちの時が来たんだ
穏やかな日々にハーブを 育てるのもいいけれど
あの ホライゾン ホライゾン 追えば逃げてく
あの ホライゾン ホライゾン 舌を出して待つのさ
風 ひとつ 合図のように 空き缶が転げ落ちた
燃える向日葵 暴れる風見鶏 蜃気楼に騙されて
あの ホライゾン ホライゾン 懐かしい場所へ
連れてけ ホライゾン ホライゾン 思わせぶりなラインで
遠く吠える 負け犬の影 旅の道連れ ロックンロール
穏やかな春に睡魔と 戦うのもいいけれど
あの ホライゾン ホライゾン 追えば逃げてく
あの ホライゾン ホライゾン 舌を出した
ホライゾン ホライゾン 懐かしい場所へ
連れてけ ホライゾン ホライゾン 思わせぶりなラインで
くびれたフォルムで いかれたムードで
急かすように 焦らすように
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くすぶっている気持ちを卑下して「負け犬」と喩えているのか。
「黒いドクロ」や「暴れる風見鶏」、「蜃気楼に騙されて」という
フレーズには10年以上やってきた音楽ユニットから脱退して
一人で活動するという自分の選択への不安が見え隠れする。
でも、すぐに決心を宣言している
「君の頬へ 最後のキッスを 旅立ちの時が来たんだ」
いつの間にか本人にとって「穏やかな日々にハーブを育てる」ような活動に
なってしまったキリンジのことを決して否定はしていない。
しかし同時に「穏やかな春に睡魔と戦って」いるような退屈な気持ちも
持っていたのかもしれない。
「追えば逃げて」いくのに、いじわるに「舌を出して」待っている。
自分の行き先はどうもはっきりしない「ホライゾン(地平線)」のようだ。
不安や迷いはあるけど「思わせぶりなライン」や、「くびれたフォルム」の
脱退して自分一人で音楽をやることへの思いは
女性に誘惑される時のようになかなか抑えきれない。
「懐かしい場所」である音楽を始めた時期に持っていた初期衝動を
取り戻したいから、そんな風に音楽を作りたいから、
どこまで続いているのかよく分からない、何があるのか分からない
「ホライゾン(地平線)」を目指してしまうのかもしれない。
「ホライゾン(地平線)」を目指すにしても
年齢やタイミング的にも「急か」されているような
「焦ら」されているような気がする。
ここまではっきり宣言しているような曲を書いておいて
すぐに脱退しなかったのは、あの地震の影響だけでなく
ファンに対する誠実さの表れのような気がする。
突然いなくなってファンに悔いが残ることがないように
最後だと知らせて、それを噛み締めながらライブや
作品を聴くことができるようにした配慮を感じる。
「青年やあのバカが荒野を目指す」ように、
「泰行はホライゾン(地平線)を目指す」。
脱退を宣言することのメタファーに、自身の初期曲「冬のオルカ」にも出てくる
「ホライゾン(地平線)」という単語を使ったことに感慨を感じるのは僕だけだろうか。
なんにしても、キリンジについては、
初期だけ熱心に聴いて、ここ10年は買ってないCDも聴いてない曲もたくさんあるけど
泰行の曲だけが入ったアルバムを聴ける日が来るのが楽しみだ。
ちなみに僕が一番好きな曲は泰行作の「スウィートソウル」です。
でも、男の決意が込められたこんな曲を知ってしまったら
男としてはとてもぐっと来ます。
(2012年の今頃になって「BUOYANCY」を初めて聴いてすみません)
※「ホライゾン!ホライゾン!」が「脱退を決意した曲」だというのは
あくまで深読みした僕個人の考えですので、ご留意ください。
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