1年前に住んでいた部屋での話。
秋の夜、仕事を終えて家に帰ると
1階のうちの玄関のあたりに何か小さい影が見えた。
最初は大きめの枯葉だと思ったけど、どうも違う。
近くまで寄ると、それは蛙でした。
しかも玄関のドアを開けると絶対にぶつかるような
絶妙なポジショニングで、見て見ぬ振りもできない状況。
とりあえず持っていた傘で、あっちに行けと突っつく。
が、思うように動いてくれない。
その日はなんとか傘で向こうに追いやって部屋に入った。
翌日の朝、ドアを開けたがいなかった。明るくなる前に家に帰ったのだろう。
しかしその後、夜帰るとしょっちゅう家の前に蛙がいる。
たまには隣の部屋の人の前にもいたり。
傘を持っている日は傘で、持っていない日は足で遠くに蹴飛ばして
一定の距離を保ち続けるように心がけました。
そうしているうちに、いつの間にか蛙は現れなくなりました。
いまになって冷静に考えると、
あの蛙はぼくに恩返しに来てたんじゃないだろうか?
蛙と言えども、わざわざ命懸けで恩を返しに来てくれる気持ちはとても嬉しい。
それなのにあんなに邪険に扱ってしまって申し訳ない。
でも、蛙を助けた記憶はないので人違いだと思う。